へぇ〜、そうだったの!? 「あいちの伝統野菜」
地産地消が叫ばれる今、その土地で古くから作られてきた伝統野菜が再注目されつつあります。でも、自分が住む地域の伝統野菜って、意外に知らない人も多いのでは?今回は、花ごころの地元・愛知の伝統野菜をピックアップし、その現状を探ってみます。
取材協力:株式会社野崎採種場、JA天白信用、JAなごや大高支店、中川区役所中川農政課
「伝統野菜」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは何ですか?———-賀茂なすなどの京野菜?それとも打木赤皮甘栗カボチャなどの加賀野菜でしょうか?確かに、京野菜や加賀野菜には全国的によく知られるメジャーな野菜が多いのは事実です。でも、伝統野菜とは、その土地で古くから作られ、その土地の食文化と深く関わってきた野菜の総称。だから、日本全国どこの地域にも、伝統野菜は存在します。たとえ伝統野菜と呼ばれていなくても、ご当地野菜や地方野菜ならきっとあるはず。そして調べてみると、花ごころの地元である愛知県にも、伝統野菜が数多く存在しました!それが、愛知県が「あいちの伝統野菜」として認定した35品種の野菜たち。全国的にはあまり知られていないかもしれませんが、愛知県は古くから野菜づくりが盛んな土地。それは、気候や風土が野菜づくりに適していただけでなく、種や苗を農家に提供する種苗会社が多く生まれ、優れた品種を作り出すことに尽力した結果でもあるようです。
そもそも伝統野菜って何でしょう?——実は、伝統野菜には一般的な定義はありません。あえて共通の定義と言うならば「その地域で古くから作られてきた<固定種>の野菜」ということぐらいです。
野菜の種には、F1種と固定種という区分があります。F1種とは、異なる形質の種(親)を人工的に交配して作られた、言わば雑種の一代目の種(子)。F1種は常に揃った品質の野菜ができ、生育も早く大量生産に適しているため、現在市場に出回る野菜のほとんどはF1種です。一方、固定種とはその地域の気候風土の中で、何世代にも渡って選抜・淘汰され、その地域に合った形質として遺伝的に安定したタネのこと。「昔の野菜はもっと味が濃くて、野菜本来の味がした」と嘆くご年配の方って多いですよね?それは、固定種の野菜は味にクセのあるものが多く、それが個性や豊かな風味になっていたからでしょう。固定種の野菜は、旬の一時期しか収穫できないことや、大きさや形が不揃いになることが多いため、生産する農家も少なくなかなか流通しにくいのが現状です。
全国各地では、こうした昔ながらの固定種の野菜を将来へ受け継ごうと、伝統野菜として広める取り組みがされています。愛知県では平成14年から伝統野菜振興事業に取り組み始めました。そして、
① 50年前には栽培されていたもの
② 地名・人名がついているものなど愛知県に由来しているもの
③ 今でも種や苗があるもの
④ 種や生産物が入手できるもの
という4つの定義を満たす35品種が『あいちの伝統野菜』として認定されました。
一口に伝統野菜と言っても、その歴史や現状は様々。次ページでは三者三様の生き方で受け継がれているあいちの伝統野菜、中でも名古屋出身の3つの野菜をピックアップします。
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