美しいだけじゃない!デルバールローズ 〜その強さのワケは?
今回、デルバール社のバラ苗の特集を組むに当たって、私たちが訪ねたのはフランス!! ではなく、岐阜県西部にある河本バラ園。驚くなかれ!耐病性に優れ、香り高くエレガントなデルバールのバラは、この場所から日本全国へ発信されているのです。
フランスのデルバール社のバラ苗と言うと、恐らくほとんどの人がフランスからの輸入品で「フランス産」だと思われるでしょう。でも実は国産、しかも「岐阜産」なんです。どういうことかと言うと…海外のファッションブランドの服でも、日本で生産すれば、その製品は“Made in Japan”になるように、デルバールはフランスのブランドですが、デルバールの苗を生産しているのは国内なのでMade in Japan”ということになるわけです。そして、日本のブランド・オーナーとして、国内で販売されるデルバール苗の生産を一手に請け負っているのが、今回取材に訪れた河本バラ園なのです。河本バラ園では、デルバールをはじめとする海外の著名ローズブランド5社のバラ苗の生産の他、河本オリジナルの品種の育種・生産、様々な切り花用・ガーデン用のバラ苗の生産を行っています。
河本バラ園が位置する岐阜県大野町は、古くから富有柿の産地として知られ、現在でも、数多くの柿農園が広がっています。バラ苗生産60年の歴史を持つ河本バラ園ですが、そのルーツもまた戦後に始めた柿などの果樹苗の生産でした。現在では15 haの広大な土地を利用し、デルバール苗を含め、年間600品種以上、約60万本(切りバラの苗も入れて)のバラ苗を生産する当バラ園ですが、果樹苗の生産からバラ苗の生産に移行したのには、いくつかの理由があったようです。まず一つは、それまでに培ってきた柿苗生産の技術が、バラ苗にも応用できた点です。当時、柿の苗は台木に接ぎ木し、二年生苗として出荷していましたが、この接ぎ木の技術は、同じく台木に接ぎ木して作られるバラ苗の生産にも大いに生かされました。さらに、大野町の風土がバラ苗の生産・生育に適していることも見逃せません。東部を流れる根尾川から得られる豊富な「水」、夏は暑く冬は寒いという寒暖差がはっきりとした「気候」、根尾川と揖斐川の粘土砂からできた砂混じりの土は、苗の掘り上げの際に根を傷めることが少ないなど、バラ苗の生産に適した「土壌」です。バラ苗生産に最適な水・気候・土壌…この三条件が揃っているのは、全国を探してもなかなかないそうです。しかし、河本バラ園が日本有数のバラ苗生産・育種会社へと成長した最大の要因は、農家は米づくりだけでも十分に生計が立てられた時代、もちろんガーデンローズという言葉さえない時代から、バラ苗の生産に情熱を注ぎ続けた河本バラ園のみなさんの努力の結果と言えそうです。
耐病性に優れ高品質なデルバールのバラ苗が、どのように生まれるのか?———次頁では河本バラ園でのバラ苗づくりのプロセスをご紹介しましょう。
河本純子さん Jyunko Kawamoto
今回デルバールローズの日本総代理店としてご紹介している河本バラ園は、オリジナル品種の育種にも力を注いでいます。その中心的存在が、現社長のお母様であり、世界でも数少ない女性育種家である河本純子さん。バラの育種のキャリアは35年以上と長く、代表作「ブルーヘブン」(2003年)「ミスティーパープル」(2004年)をはじめ、花ごころ専売の『ヘブンシリーズ』など、女性ならではのしなやかな感性が漂う作品を発表し続けています。目指すのは「草花のような」バラだそうです。
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