その時そこが決め手!!イチゴ栽培のターニングポイント
ビニールハウスで育った市販のイチゴしか知らずに、イチゴは冬のフルーツだと思っている人も多いかもしれません。でも、本来は春から初夏に旬を迎えるフルーツです。自分で育ててみると、そんなこともわかってきますよね。さぁ、真っ赤に熟した美味しいイチゴを目指して、栽培スタート!
イチゴは、春に花を咲かせて実をつける〈一季なり〉と、春から秋まで長い期間に渡って実をつける〈四季なり〉の2タイプに分かれますが、育てやすさと味を追求するなら、一季なりがオススメです。よく聞かれるのが「自分で育てると、市販のイチゴのように甘くない」という声。確かに、スーパーでよく見かける『女峰』『章姫』などの人気品種は、甘くて美味しいですよね。でも、これらの品種は一季なりとはいえ、ハウス栽培用に開発されたものなので、露地栽培では管理が難しいというのが現実。一季なりのオススメ品種には、『宝交早生』『カレンべリー』『とよのか』などがありますが、特に『宝交早生』は、50年以上前からの家庭菜園の定番。ロングセラーとして愛される理由は、病害虫に強くて育てやすく、市販品種とまではいかないまでも、美味しいという定評があるからなのです。しかも、苗の価格もリーズナブルなのも魅力です。
秋になって一季なり品種の苗が店頭に並んだら、茎ががっしりと太く、葉色の濃い苗を選びます(株元のクラウンがしっかりとしているかどうかもチェック!)。植え付け時期は10月がベスト。イチゴ苗は植え付けた後、冬の寒さに当たることで、翌春の開花の準備が整うため、最低でも休眠前の11月中旬までには済ませます。
植え付ける際に、注意すべきポイントは2つ。「ランナーの向きを揃えること」と「クラウンが埋まらないように浅植えにすること」です。市販のイチゴ苗には、下イラストのように、ランナーと呼ばれるつるの一部が付いています。イチゴは、このランナーの反対側に花を付ける性質があるため、ランナーがすべて内向きになるように植え付ければ、プランターの外側に花実が付くことになり管理がラクになります。また、クラウンと呼ばれる葉の付け根の部分が埋まらないように浅植えにするのも大切。なぜならイチゴの生長点はクラウンの周囲にあるので、土に埋まってしまうと育ちが悪くなります。植え付け後は、鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水やりをし、日当りの良い場所に置きましょう。
「苗にランナーが付いているのは何のため?」
イチゴはランナーを伸ばして次々と子株をふやします。子株は両手をつなぐようにランナーで繋がっています。市販の苗はこの子株を親株から切り離したものです。子株は親株とは反対側に花を付ける性質があるため、親株側のランナーを残しておけば、苗の植え付けの向きを決める目印にできるのです。
一季なりのイチゴは、10月以降の気温の低下と日照時間が短くなることで花芽をつくる短日性の植物です。さらに寒さが厳しくなると休眠期に入ります。葉は寒さをしのぐかのように地面にへばりつくように広がり、いかにも寒そうに見えますが、防寒は不要!なぜならイチゴは一定の寒さに当たらないと休眠から目覚めないからです。冬の間のイチゴには、目立った生長は見られませんが、できるだけ日の当たる場所に置き、土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るぐらいたっぷりと、冬場も水やりを続けます。その他の作業としては、病害虫の温床になる枯れ葉や雑草を取り除く程度です。
「葉が赤くなったけど大丈夫?」
寒さが厳しくなると、イチゴの葉が赤くなることがあります。「栄養不足?」「病気?」と心配する人もいらっしゃいますが、慌てることはありません。これはイチゴにとって自然な現象です。但し、この赤い葉はやがて茶色になって枯れてしまうことがあります。茶色く枯れてしまった場合は、病気につながる心配があるので、付け根から取り除きます。つまり、赤くなったぐらいならまだまだ大丈夫!栄養不足かと勘違いして肥料を与えたりするのは禁物ですよ。
イチゴ栽培では、「肥料の与え過ぎが原因で失敗した」という人も多いようです。確かに、イチゴの根は細く肥料やけしやすいので、与え過ぎは禁物です。でも、充実した実を付けさせるためには、追肥は不可欠。収穫までに2回、固形肥料を与えましょう。最初の追肥は1月、2回目は花が咲き始める3月頃。与え過ぎもNGですが、追肥を忘れて失敗するケースも多いので、注意しましょう。
休眠から目覚めた株は、春の訪れとともにグングン生長し始めます。中には、時期でもないのに早々と花を咲かせることもありますが、3月になる前に咲いた花は、養分の分散を避けるために摘み取るようにします(摘花)。また、この時期、ランナーも伸び始めますが、そのままにしておくと養分が奪われ、肝心の実に養分が行き渡らなくなります。収穫が終わるまでは、株元付近で切り取るようにしましょう(ランナー切り)。
3月以降、次々に花が咲き始めます。可憐な白い花をよ〜く観察してみてください。イチゴの花は1つの花の中に雄しべと雌しべが同居する両性花。花の中心部に半球状の花托(かたく)と呼ばれる部分があり、この上にたくさんの雌しべと、先端に丸い袋のような物が付いた雄しべが付いています。私たちが果実だと思って食べている部分は、この花托が発達して赤く熟したもの。受粉しない雌しべがあると、その周りの花托が発達しないため、果実が小さくなったり、形がいびつになってしまいます。確実に果実を実らせるためには、人工授粉をしてあげましょう。人工授粉の方法は、毛先の柔らかい筆や耳かきの梵天などを使って、花の中心付近をクルクルと軽くなでるだけ。
そろそろ収穫かな?と思っていたら、まんまと鳥に食べられてしまったという苦い経験、ありませんか?果実が色づき始めると鳥たちも狙っています!早めに防鳥ネットや寒冷紗などを使って囲いをするなどの対策を。また、空からだけでなく、地面からも厄介者がやってきます。それは果実を食害するナメクジ。ナメクジ対策は、プランターを台の上に置くなど、地面から離す工夫をしましょう。ちなみに、ビールはナメクジの大好物。飲み残しを置いて、ナメクジが飲みにやってきたところを捕獲する手もあります。この場合、くれぐれも飲み逃げされないように注意してくださいね。
開花から30〜40日後、いよいよ収穫期を迎えます。へたの近くまでしっかり色づき、よく熟した果実から順に収穫しましょう!
「うどんこ病は、どうする?」
イチゴの病気で厄介なウドンコ病。まずは肥料の与え過ぎに注意し、日当りや風通し、排水が悪くないかなど栽培環境をチェック。あとは、まめに観察し、被害にあった部分を除去したり、果実が小さいうちに薬剤散布するなど早め早めの対処をしましょう。
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