盆栽家・山崎ちえさんに聞く「盆栽ビギナーのための 基礎講座」(1)
樹高20cm 以下のものを『小品盆栽』、その中でも10cm 以下のものを『ミニ盆栽(豆盆栽)』といいます。その始まりは、熱烈な盆栽愛好家だったという松平頼寿伯爵が、第1回国風盆栽展(昭和9年)に小品盆栽を出展したことがきっかけで一気に有名になったといわれます。そして現代では、手のひらにのるほどのこの<小さな大自然>に魅せられる老若男女が急増中なんです。とはいえ、いくら可愛くても盆栽には、歴史に裏打ちされたルールみたいなものが存在し、何をどうすればいいのかわからないという人も多いはず。そこで、花や木は育てたことがあるけれど、盆栽は初めてという人のために、小品盆栽の専門家・山崎ちえさんに、一般的なガーデニングと盆栽の違いも含めて教えていただきます。
ガーデニングでは、これから樹木を育てようと思ったら、まずは苗木の購入から始まります。盆栽の場合も、ポット苗など盆栽の素材として植えられたものもありますが、初心者の場合は、盆栽専用の化粧鉢に植えられ、<作品として完成しているもの>からスタートするのがオススメです。値段的には、もちろんポット苗の方が安価ですが、1からスタートするには、道具や鉢などを準備するのも大変ですし、いきなり植え替えなどをする技術も必要です。ならば、最初は好みの作品を購入し、盆栽を観察しながら管理することから始めましょう。作品というと高価に思われがちですが、小品盆栽なら2〜3千円ぐらいから入手可能です。
「最近はお洒落な雑貨屋さんでも小品盆栽をよく見かけます。また、インターネットでも手軽に買える時代になりましたが、最初の盆栽は、実際に専門店(盆栽園)に足を運び、目で見て購入した方が、サイズ感も把握でき、いいと思います。専門店なら一鉢一鉢、きちんと屋外で管理されていることもわかるので安心です。育て方のアドバイスも受けられますよ。」
小品盆栽に使われる樹木の種類は実に多彩ですが、大きく分けると、マツやヒノキなどの常緑の針葉樹の「松柏(しょうはく)類」、落葉広葉樹や常緑広葉樹の「雑木(ぞうき)類」、雑木類の中には、花を楽しむ「花もの」や、果実を鑑賞する「実もの」、葉の様子を楽しむ「葉もの」などがあります。山崎さんに、それぞれのタイプの中で、初心者にもオススメの樹種を教えていただきました。
松柏類
『真柏(シンパク)』
<ヒノキ科の常緑樹>
比較的乾燥にも強く丈夫で育てやすい樹木。枝が柔らかいので樹形も整えやすく、葉は手で摘むこともできてお手入れもラク。
雑木類
『山紅葉(ヤマモミジ)』
<ムクロジ科の落葉樹>
春の芽吹き、秋の紅葉、落葉後の繊細な姿と、四季を通して楽しめる。樹木の中では生長が早いので、マメな手入れが必要ですが、数年で形になるのも魅力。
雑木類(花もの)
『長寿梅(チョウジュバイ)』
<バラ科の落葉樹>
四季咲きで冬にも花が楽しめることでも人気。花後、実がなると木に大きな負担がかかるので、花がらは摘みとるようにします。
雑木類(実もの)
『紅紫檀(ベニシタン)』
<バラ科の落葉樹>
秋の鮮やかな赤い実が美しい人気樹種。5月頃に咲く小さな花は目立たないけれど、人工授粉などしなくても、たくさんの実を付けます。
「私が初めて育てた樹種は『真柏』。松柏類の中でも育てやすさはピカイチで、今でも一番のお気に入りです。桜の盆栽はとても可愛くて、憧れる人も多いのですが、水切れしやすかったり、虫がついたりと、意外と難しいんです。初心者の方は、まずは育てやすい樹種を選んで、盆栽に慣れていただきたいですね。」
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