盆栽家・山崎ちえさんに聞く「盆栽ビギナーのための 基礎講座」(2)
盆栽として完成した作品からスタートする場合、専門書によく書かれている剪定や針金掛けなどテクニックを要する作業はひとまず忘れて、現在の形をキープすることに重点を置きましょう。そのためには、まずは盆栽を受け入れるための環境を整えること、そして基本的な管理を覚えましょう。
盆栽に使われる樹種は、日本の自然の中で、雨風に晒されながら生きているものばかり。だから、盆栽は1年を通して屋外(ベランダでもOK)で栽培します。インテリア感覚でずっと室内に飾っている人もいますが、木が弱ってしまうので絶対に避けましょう。
浜辺に生えているマツは夏でも日当りが良い場所、森の中で育つモミジは真夏は半日陰で育てるなど、樹種によって多少の違いがあり、自生地に近い環境に整えてあげるのがポイントですが、基本的には日当りと風通しの良い場所を好みます。また、屋外では、鉢底からの虫の侵入や、コンクリートの照り返しを避けるためにも、地面やベランダの床に直接置かず、棚や台の上で管理しましょう。
盆栽で失敗しないためには、とにかく水やりに慣れることが大事!水やりのタイミングは、他の草花と同じく、鉢土の表面が乾いたら、鉢穴から流れ出るまでたっぷり与えるのが基本です。但し、決定的に違うのは、水やりの回数。鉢が小さく土の量も極端に限られた小品盆栽では、用土がすぐに乾いてしまうため、冬は1日1回、春と秋は1日1〜2回、夏は朝昼晩と1日3〜4回行います。ガーデニングでは真夏の日中の水やりは、根が蒸れてしまうので御法度ですが、盆栽の場合は別!暑過ぎて鉢から湯気が立つこともあるけれど心配無用です。
水やり方法は、ジョウロを使う場合は、ハス口を付けてまんべんなく水をかけます。ガーデニングでは、葉や茎にかからないように株元に水やりをしますが、盆栽は木のてっぺんからたっぷりと(イラスト左参照)。また、鉢数がそれほど多くない場合は、『ドブ漬け』がオススメ(イラスト右参照)。この方法なら用土全体にしっかりと水が行き渡ります。夏場の外出や数日旅行する場合は、水を張ったトレイなどに鉢を浸けておく底面給水が便利。底面給水をする場合は、直射日光で水温が上がらないように、日陰や室内に移動しましょう。
肥料は基本的には春と秋に、油かすなどの緩効性の固形肥料を与えます(花ものや実ものには、リン酸成分が多い固形肥料が最適)。盆栽の施肥の目的は、大きく育てるためのものではありません。小さくても元気な木に育てるためのものなので、最小限に抑えます。与え方は、針金をU字形に曲げて固形肥料を挟み、表土に刺して固定しましょう(イラスト参照)。
新芽が伸びる春から秋にかけては、日々の作業として芽摘みを行います。芽摘みとは、新芽の先をピンセットなどで摘んで、美しい樹形を維持するためのもの。小さな盆栽では、細かな枝が多いほど大木感が出ます。特にモミジなど葉もの盆栽では繊細な「枝のほぐれ(※)」が見どころ。芽摘みによって、新芽の伸びを抑えて枝の太りを抑えるとともに、下の節から新しい小枝が芽吹くのを促し、小さくてもバランスのとれた姿に保ちます。
(※)細くたくさんの枝が分岐してること
「盆栽の失敗の原因の9割が水やり、と言っても過言ではありません。ガーデナーで多いのは、水のやり過ぎは良くないと思って、盆栽でも水やりを控えてしまうという人たち。夏場は特に、すぐに乾くので、どんどん与えてください。盆栽愛好家の中には、自動潅水機を利用する人や、夏場は水やりがあるので旅行をするのは冬だけという人も…。私は、自宅の庭で200鉢ほど育てていますが、留守にする場合は、自動潅水機ではなく、もっぱら家族が水やり担当です(笑)」
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